2016年の春の話。目黒川の桜並木をみるのに、だらだらと上流へ向かって散歩をしてみた。天気はちょっと汗ばむくらいの晴れた昼下がり、まだまだ花は盛りの時期で散っているものも少ない。まさに、この世の春の中心のようなところを歩いていた気がする。

出発は恵比寿で、そこから目黒の清掃工場の方に丘を越えていく。最初はどうってことのない繁華街だけど、坂をあがりきるとその右手には防衛省の関連施設があり、まわりは住宅地になる。そこが丘の頂上になっていて、道は清掃工場の横の通りを降りきったところにあるのは中里橋。この通りは新緑の季節に通るのもまた気持ちがいい。

中里橋からの風景

中里橋で目黒川にぶつかる。ここで、通りから歩道へ右に曲がり川沿いに約3キロくらい、池尻大橋までのんびりと散歩しながら歩いて行った。距離としては3キロ弱くらいで、普通に歩けば40分くらいだろうけれど、なんだかいつの間にか2時間以上もかけて歩いていたことになる。楽しい時間はなぜこんなにも早く過ぎるのか。

僕が訪れたときは、中里橋のあたりはまだ半分くらいの開花状況、でもつぼみはピンク色に染まっていて、いまにも咲き出しそうな色をしている。歩道の脇にはお弁当をひろげていたり、木陰でのんびりと話しをしていたりする。寒くもなければ、暑すぎることもない。こんな日は屋根の下にいるなんてもったいない。

そういえば、昔読んだ本のなかで、染色につかう桜色の染料は、花が咲く直前の樹皮を剥いで作っているという話しを思い出した。花を染料につかったり、花が咲いた後の樹皮では色が染まらなかったり、定着しないみたい。つまり、僕がいまみているこの花の色は、冬の間は樹の内側でじっくり作り上げられているものなのかと思うと、自然ってどういう風にしてこういう色を作り上げたんだろうかって不思議な感じがする。

大きな病院の横を通り抜けて行くと、桜並木に提灯がつきはじめてくる。この提灯の色合いが原色過ぎて僕にはどうにも好きになれないんだよな。これつけるくらいなら普通に寄付募った方がいいと思うくらいだ。

そして、川沿いの歩道は駒沢通りで一旦途切れる。歩道橋をあがって反対側にわたるとまた道があるのだが、ここまで来ると随分と賑やかになってきている。中目黒駅のところでは屋台も出ていてかなりの賑わい。川沿いのレストランもちょっとしたおつまみがあったり、お酒を出したりしている。こういうときはちょこちょことつまみながら歩くのが楽しい。

そして、夜にはライトアップもされていて、これはこれで美しい。夜に訪れたときは光を反射した桜の花が星のように舞っているようにみえて、そして濃い影のコントラストが立体感をましているのか、小さな星雲のようにも思える。

夜の風景

昼間の光のなかでは、まさに春の色。白のなかにほんのりと淡いピンク色の配色は完璧なまでに美しい。美しさを感じるというのは、学習のたまものであると思うのだが、この色をみて春の美しさを感じられることって幸せなものだな。

中目黒駅のあたりはまさにいまが満開。それにしても、以前より人が増えた気がする。橋の上では警備員の人が「ここは、道路で写真を撮る場所ではない」と叫んでいる。まあ、言いたいことはわかるけれどさ。みんな居座っているわけではないし、融通しあいながら写真を撮っている。春色な風景。

ここらへんで、山手通りの方に出ると、ナポリピザの名店である「ダ イーサ」もあったりする。目黒川沿いのお店はまず入れないし、特別料金だったりせわしなかったりする。ダ イーサも充分混んではいるけれど、こっちの方がおすすめ。

池尻大橋の近くまでくると川が少し左側へと曲がっていて、そこにあるのは赤い橋。このあたりは日当たりがいまいちなのか、ちょっと満開直前という感じになっている。それでも、充分過ぎるくらいに美しいけれど。

そんな風に歩いて行ったら、いつの間にか山手通りの立体交差のところへ出てきて再び道が途切れる。ちょこっと迂回してからは川を離れて池尻大橋の駅へと向かう。渋谷から一駅だけど、このあたりは裏通りも静かでいい街だ。

目黒川の桜散歩で春をめいっぱい満喫したなあ。この時期は昼も夜も魅力的なルートだと思う。

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