ひさびさのプノンペンへの旅。そして、ひさびさにトゥール・スレンへ行ってきた。行くと、その凄惨さと妙な生々しさにどんよりしてしまうのだけど、プノンペンに来たならば訪れた方がいいところではある。

プノンペン市街にマオツォトン通り(Mao Tse Toung Blvd)というのがあるのだが、多くのクメール人にとってこの通りの名前は複雑な気持ちになるのではないかと思っている。マオツォトン = 毛沢東の名前がつけられたこの道路は幹線道路となっている。

毛沢東の思想をもっとも体現していたのは、1970年代後半にこの国を支配していたクメールルージュであり、中国の文化大革命なんてかわいいものだというくらい急進的な思想のもとに、いまとなっては国を荒廃させていた。

Tuol Sleng Genocide Museum

カンボジアにとってのクメールルージュは基本的に悪ではあるのだが、いまだ農村にいくとその時代の残党はいるし、農家のおばあちゃんと話しをすると「あの時代はそんな悪くなかった」とかいう人もいたりして複雑な存在ではある。マオツォトン通りの存在はその象徴的なもののように思えてしまう。

トゥール・スレンはそのなかで、クメールルージュの悪行をもっとも明らかにしているところ。ジェノサイドということであれば世界でもなかなかないくらいひどいところだと思う。

トゥール・スレン虐殺博物館へのアクセス

市街地にあり、徒歩でも行けなくはないけれどトゥクトゥクを利用した方が楽。市内巡りでチャーターしてしまうのがいいと思う。半日で10-15ドルくらい。

トゥール・スレン虐殺博物館について

もともとは、リセだったところなのだが、クメール・ルージュ(ポルポト)時代にはS21という名前で収容所としてつかわれていた。1976年から3年弱の間に2万人が収容され、ここから生きて出られたのは8人だけだったという壮絶な歴史をもっている場所。

Tuol Sleng Genocide Museum

以前はわりとあれこれ写真が撮れたのだけど、いまはかなりの部分が撮影禁止になっている。そのかわりといってはなんだけど、音声ガイドが借りられるようになっていて、日本語版もあり、これは相当に生々しい。オーディオガイダンスに従ってみてまわると2時間くらいかかると思う。

ここの収容所というか、プノンペンに来るにあたって読んでおくと印象がかわる本としてはフランソワ ビゾの”The Gate”という作品。ポルポト時代に収容所に捕まったものの、脱出に成功。プノンペンが陥落したときにはフランス大使館いたときの記録を残している。ちょっと分厚い本なのだが、この本は必読だと思う。

このなかでS21の所長であったドッチと出会っていて、その人物像を残しているのだが、これがとても興味深い。人は状況によって人道的にも残虐的にもなれるのだなというのがみてとれる。

ドッチは1999年にカンボジア西部の田舎であるバッタンバンにいるところを見つけられて、現在服役中なのだけど、この自分の民族を組織の被害妄想から人口の4分の1も虐殺するという狂気の時代っていったいなんだろうかと思ってしまう。

撮影禁止になるより以前に撮ったもの、人型にへこんだベッド
かつての教室は監獄になっている
移動がしやすいように教室の壁に穴があけられていた
たった数十年前にここで過ごして死んでいった人がいるとは
Tuol Sleng Genocide Museum

なかでも、みておいた方がいいと思うのは、人型にへこんでしまっている鉄製のベッド。そのベッドに人をくくりつけて自白を強要していたという。そして、ここで死んでしまった人たちが収容されるときに撮られた写真たち。自信をもって撮られていたり、これから自分の身に何が起きるのかわからない不安そうな表情だったり、この国の優秀な人たちはこの時代にそうとういなくなってしまったのだろうなって実感する。

これをしてきたのはクメールルージュの人を信用しない思想そのものだと思うのだが、人間ってこんなにも残虐になれるし、そのときのルールに従っていればなんでもしてしまう存在なのだなとちょっと恐くなる。一番悪いのはルールを作って強制するやつだが、一番恐いのはなにも考えずにルールに従って行動してしまうことなのかもしれない。

トゥール・スレン虐殺博物館(Tuol Sleng Genocide Museum)
住所:Corner of Street 113 & St 350, Phnom Penh
時間:7:00-17:30

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