
ちょっと思い立って冬の京都へ行ってみることにした。
この冬は厳冬のヨーロッパでビール飲んだりコンサートでも行ってみるかとか考えてもいたのだが、よくよく考えてみると、そんな体力も時間もなかったので手軽な京都へ・・というところ。
荷物をまとめたら、品川駅で新幹線の切符を買って京都まで2時間の旅。ちょっと本を読んでいたらついてしまうくらいで拍子抜けしてしまうくらい近い。しかし、京都駅に降りた感覚は2時間の移動以上にあって「ああ、違う土地に来たんだな」っていう感覚があるのがなんだか不思議、でも、楽しい。
まず行ってみたのは、最近になって読み続けていた新選組関連の舞台になっている壬生地区。京都からは地味な山陰線に乗って向かうのだが、壬生のエリアはいまもむかしも京都の郊外なのだなあっていう感じがする。そうかあ、このあたりの通りを100年ちょっと前くらいには刀を差した新選組が歩いていたのかと思うと、いまの世界の変わりようにちょっと驚くところはある。

新選組が拠点としていた壬生寺はこのあたりでは大きな寺院であり、境内には幼稚園と老人ホームまであった。昔は浪人、いまは老人と、その時代によって役割は違うけれど、心の広いお寺だよなって思う。新選組関連のポイントはちょっと不思議な観光地化されていて、まあそれはそれで面白かったところ。
お寺のすぐ隣には八木家という新選組が決起した住居跡がある。一見すると普通の古い住居で新選組に興味なければなんてことのない場所ではある。しかし、柱についた刀の切り傷も生々しく本当にその時代があったことを証明している。あまりにもかけ離れていて理解しがたいところがあったけれど、この切り傷をみて実感した。


壬生からは阪急電車に乗って河原町へと出る。カカオマーケット・バイ・マリベルで京都土産とか、自分へのお土産を仕入れたあとは、Airbnbの宿へと向かう。ごく普通のアパートなのだけど、そこの一部屋を借りているのは、自分が京都に住んでいるような感じで京都にひとり暮らししているみたいで、ちょっと面白い。いつものシタディーンも快適で好きだけれど、こういうのもまた京都の旅だなあって思う。
いつも楽しみにしている「ギア」の舞台を観るまでの間に近所のカフェ コチで早めの夕食。老舗のカフェだけれど、変わらずのスタイルで居心地のよさがいい。ここはオフシーズンに来るのが圧倒的におすすめ。紅葉とかのハイシーズンになると入店すらままならないものな。

そして、ギアの舞台。今回はVer4.0と前回よりも少しバージョンアップしていた。言葉に頼らないノンバーバルのパフォーマンスは外国旅行者にも人気で、いまじゃすっかりチケットが取りづらい人気の舞台になっている。
1年前には信じられないくらいだが、本当に人気になっていて、他人事なのに嬉しいなあって思う(チケットが取りづらいのは困りものだが)。

あっという間の100分が経ち、このまま部屋に戻るのもつまらないので夜の京都を散歩してみることにする。
まず行ってみたのは京都で学生時代を過ごした友人が絶賛する餃子屋の歩兵。京都で餃子かよって思うわけだが、ここの餃子は絶品でしかも京都でしか食べられないものだと思う。
なので、京都で歩兵の生姜餃子はアリです。ひとつひとつが小さいので、普通の餃子と生姜餃子を一人前ずつ頼むのがおすすめ。ビールはやはり瓶ビールだな。


そのあとは、すぐ近くにある「いづう」でお寿司。海が遠い京都ならではの細工されたお寿司は独特の美味しさがある。鯖姿寿司と小鯛の雀寿司がおすすめ。お店の外観はちょっと動揺するくらいに敷居が高そうにみえるけれど、なかに入ると全然普通です。なので、ちょっと気軽に行けるところ。
そして、旅先で訪れたバーはThe Common One Bar Kyotoというところ。ここは敷居が高いというより、場所が分からない。Google Mapに登録されているのにお店の場所が分からないくらい難しい。宝探しのように小さな看板をみつけて訪れてみてほしい。その先には居心地のいい空間と美味しいお酒がある。


シメは祇園のまん中にある「おかる」でカレーうどん。コシのない京都のうどんは最初びっくりするけれど、これがちょっとはまってしまう。ちょっとジャンクな感じがまた美味しい。ほろ酔い気分で気づいたらすっかり深夜になってしまった。
前夜さんざん飲んだのに二日酔いもなく気持ちのよい朝の目覚め。翌朝は龍安寺へ行ってみることにした。
フランク・ゲーリーやスティーブ・ジョブスも愛した石庭の枯山水とひさびさに対峙してきたのだが、この空間はやはり不思議だ。計算し尽くされているのだけれど、ひとつひとつの存在はきわめてシンプルで余計なものがない。とくに冬の時期には色すらもないので、そのそぎ落とした感覚が際立っている。面白い場所だよなあ、いろんな見え方、考え方ができる場所だと思う。

ここから、京都に住んでいる友人と合流して伏見へと行ってみる。京都には何度も来ているけれど、伏見ははじめて。
そして、伏見にきたのに伏見稲荷には参拝をせず、今回向かったのは寺田屋、そして酒蔵巡り。寺田屋はテーマパークみたいな嘘っぽさがあって、この感じはなぜだろうと思ったら実際の建物は鳥羽伏見の戦いで焼失していて、いまのは再建されたものだということ。

じゃあ、あの銃痕とか刀傷はなんだったんだよ・・と思ってしまう。しかし、その場所があり、雰囲気が感じられるということであれば楽しい場所だった。坂本竜馬はここから京都まで歩いて行ったのかとか実際に距離感とか雰囲気がわかるのは歴史が自分のものになる感覚がある。
伏見の日本酒について。月桂冠とか黄桜とか、正直どうでもいい日本酒を造る大手メーカーがあることも影響して、僕のなかでは伏見の日本酒の印象はよくなかったのだけど、その月桂冠や黄桜含めて、いままで偏見もっていて申し訳ないと謝りたい。伏見のお酒はバリエーションも豊富で美味しいお酒が沢山あった。


酒蔵が直接やっている「えん」や「おきな屋」でのお酒も楽しかったけれど、通り一遍に楽しむのであれば伏見大手筋商店街のなかにある油長という酒屋さんの奥にあるバーだと思う。数多くある伏見のお酒をそろえていて、飲み比べをすることができる。ここで飲んだ月桂冠や黄桜の大吟醸は、真剣勝負の美味しさがあり芳醇な雰囲気が忘れられないものだった。飲み比べをして、好きな酒蔵に行ってみるというのもまた伏見の旅のよさかもしれない。
夜には京都市内へ戻ってきて、酔い覚ましというわけでもないが木屋町の裏通りにあるElephant Factory Coffeeへ行ってみる。本当にこの路地にあるの?っていう裏通りにひっそりとあるお店は哲学者の書斎というかなんというか、おもしろい雰囲気で僕は好きだな。コーヒーも美味しく、そしてブラウニーも美味しく。すっかり酔い覚ましになった。



そして、少し離れたefishに行ってみて帰りの深夜バスの発車までの時間は祇園にあるフィンランディア・バーで過ごす。The Common One Bar Kyotoと同系列のお店で提供しているカクテルには共通点も多いけれど、それぞれのお店のよさがあってどちらも捨てがたく素敵な場所。
行きやすいのはフィンランディアバーだな。カクテルを飲みながら過ごしていたらあっという間にバスの時間になってしまい、危うく乗り遅れそうになってしまったくらいだが、一泊二日で充実した旅をすることができた。
京都はオフシーズンにくるに限るって思っている。でも、一度くらいは桜や、また再び紅葉のシーズンにも来てみたいものだな。