以前より気になっていた分子料理(分子ガストロノミー)を体験するため、ついにマンダリン オリエンタル 東京にあるタパス モラキュラーバー(Tapas Molecular Bar)に行くことができた。

分子料理とは、世界一予約のとれないレストランとして有名なスペインの『エル・ブリ』で生み出された化学的アプローチによる調理方法で、この影響は分子料理を専門としなくても色んなところに出てきている。

マンダリンオリエンタル東京の38階ラウンジにお店はある。ランプシェードがかわいい。

ここで科学的なアプローチよる料理を楽しみながら感じていたのは、「美味しい」という感覚は舌と脳が感じ取っているのではなくて、料理のみためや食材を巡るコミュニケーションとか説明、そしてなにより誰と一緒に食べるかっていうことなんだろうな。それでいうと、この日の夜はどれもが最高峰にピッタリきていて心の底から美味しいなあ・・って感じられるものだった。

ということで、そんな日の記録。ものすごい期待をして訪れたのだけど、その期待のさらに上をいくような体験となった。

タパス モラキュラーバーでは約4ヶ月ごとにメニューの入れ替えがされていて、このメニューは2014年11月時点のもの。現在は違うメニューとなっているので、ネタバレということならないだろうなということで公開。

ちなみに、撮影はウェルカムなレストランで、できれば動画が撮れたりするとさらにいいかもしれない。僕は小さいデジカメしかもっていかなくて後悔したくらいだ。

場所はマンダリンオリエンタル東京の最上階38階にあるラウンジの一画で、普段はふつうにバーとして営業しているのだけど、分子料理を提供するときにはそこがカウンター8席の完全予約制のレストランになる。

とはいえ店名が示す通り、タパスっぽい小さいポーションの料理が怒濤の勢いで出てくるので、それを楽しんでいく感じ。料理を楽しむ雰囲気はカジュアルだけど、訪問にはドレスコードがあるし、ちゃんとしていかないと結構恥ずかしいと思うので、まともな格好をしていくこと。

席に案内されて座ってみると、目の前には化学の実験で使うようなものとバンダナで包まれたなにかがある。写真のタブレットみたいなものにビーカーの水をかけるとお手ふきになりますっていわれて「は?」となったんだけど、水をかけてみるとにょきにょきをタブレットが伸びてきてミントの香りのするお手ふきになった・・・。なんだこれ。。

この白いタブレットみたいなものに水をかけるとお手ふきに
ミントの香りのするお手ふきになった・・
これで料理食べますっていわれてもね・・

そして、バンダナに包まれたものは工具箱で、なかにはハンマーとかメジャーとかピンセットとか入っている。料理人の人がすごいまじめな顔で「道具箱のなかみはこれから料理を食べていくときに使うので、中身を確認してください」というのが・・よく信じられない。

しかし、本日のメニューはメジャーを引っ張り出してくださいというので、出してみて・・メジャーの裏側にずらずらとメニューが書いてあって、なんだか仕掛けのある手品をみているような気分になる。そして、メニューが長い・・・1メートル以上あって驚く。最後の方にあった12時間遅れの朝食ってなんだろう・・とかメニューだけでは何のことかわからない。

メニューはメジャーの裏側に書かれている。すごい長いメニュー。

そうそう。ドリンクについては料理にあったお酒を提供するコース(ノンアルコールもあり)があって、今回はそれを頼んでみた。スタートのシャンパンから白ワイン、日本酒、赤ワイン、デザートワインと飲み進めていくので、量のわりには結構酔いがまわりやすいかもしれない。お酒弱い方は注意した方がいいかと。

ということで、ちょっと戸惑いながらの分子料理の世界がスタートした。

Welcome/ウェルカム
ビーツルート(ミント/キャラメル/キヌア)

なんかイチゴの置物みたいなのが出てきた・・・。シェフの人が「それでは、みなさんハンマーでりんごを割ってください」と、やや厳かに宣言して料理の開始。

いきなりハンマーで割るなんて・・。シェフの人もいってたが「よく食べ物で遊んじゃいけませんって言われてきたけれど、ここでは食べ物で遊ぶのです!」というのが最初からきている感じ。遊ぶという感覚もそうだけど、それ以上に楽しむっていう感じが強いな。

で、イチゴを割ってみるとなかからビーツルートのつぶつぶがでてきた。なんだこれは・・。そして、見た目の美しさとともに、なにしろ食べてて美味しい。普通のおいしいを突き抜けたところにある美味しさだな。不思議な感じ。

パフ(ポテト/スモーク/キャビア)

続いての料理はマカロンみたいなパフ。

エルブリが開発したエスプーマという液体の食材に炭酸ガスを注入する機器を使ってスフレ状にしたジャガイモを使っている。

なんかこう、見た目は全然ジャガイモじゃないのに、味はジャガイモという、すごい不思議な食感。

これまた、ハンマーで外の殻を割るのだが、なかからキャビアが出てくるのがまた面白い。

化学の実験みたいだが、マカロン作成中。
これまたハンマーで破壊
トリュフ(ボッコンチーニ/天ぷら)

モッツァレラチーズの一種であるボッコンチーニのフリット・・・なんだけど、コルクの上に乗ってきたものはなんだか不思議なキノコみたいだ。イカスミでコーティングして揚げているみたい。手でつまんで食べてみるのだけど、きのこ狩りしているような気分。

見た目のおもしろさとは違って食べてみると、チーズの濃厚さがぎっしりしていてなんか肉のような雰囲気もある圧倒的な美味しさだった。

Appetizer/前菜
シーザーサラダ

なんてことのないサラダを作っているなと思いつつ・・これが一番びっくりした演出だったかも。まずは普通にサラダを作り始めていて、シーザーサラダといえば~とかやっていたのだけど、ここで気づかなかった自分を楽しく悔しがりたい感じ。

シェフがサラダに足りないのはドレッシングですよねってことで、液体窒素持ち出してきたときにびっくり。そして、ドレッシングが液体窒素で粉のようになってかかっているのをみて感動。粉雪みたいな見た目と食感なのに味はドレッシングという体験はすごい楽しいものだった。ここはもう驚きます。

セビーチェ

セビーチェって魚のマリネってことなんだが、そのマリネの方法がかなり変わっていて熱くした燻製機を使って海水でマリネをしていた。マグロをあぶってマリネするのだが、時間も決まっていて、そのプロセス自体が舞台の演出のような感じで、みていて楽しい。

料理を作っている方も、食べる方も楽しみながらやっているのがすごいいいなと思える瞬間。

そして、出てきたマグロは臭みがないのにレアに保たれた食材の風味は感じられるという絶品さ。こんな料理がこの世にあるのかって驚く。

たらば蟹、だし/砂(イカスミ、砂)

続いて出てきたのは円筒状の容器に入った料理。上に乗っているのがきっと、たらば蟹であることはわかるのだけど、まん中で浮いている物体(指でさしているもの)はなんなんだ・・。ヘンな草生えてるし。そして、下に敷いてある砂鉄みたいなものの存在も気になる。

とりあえず、たらば蟹を食べようかと思うのだが、これは工具箱のピンセットを使って食べるとのこと。はじめはもの凄い違和感あったのだけど、使ってみるとすごい便利というか、これはピンセットではなくてお箸なんじゃないかと思うくらいだ。持ち方の矯正にも使えそうなかんじで自然につかってしまう。

ピンセットで食べるわけです

そして、中央の物体は容器をひっくり返して確認する。

これは出汁で作られたゼリーになっていて、隣の砂をかけて食べるみたい。砂って・・イカスミの粉末みたいなのだが、大丈夫なんだろうかと恐る恐るかけてみる・・すごい美味しい。出汁のゼリーもはじめてだけど、これってお弁当に使いたくなるくらいのものだった。

出汁ゼリーに砂をかけて食べる
しかし、砂にみえるな・・これ
Degustation/デギュスタシオン
しゃぶしゃぶ(海老/コンソメ)

では、そろそろメインに行きますってことで、しゃぶしゃぶ。さっきのセビーチェもそうだけど、和食のテイストを感じさせる料理がつづく。盛りだくさんな内容で楽しい。

ここのしゃぶしゃぶは、ちょっと変わっていて(まあ、変わっているのはこれだけじゃないけれど)、あらかじめセッティングされたところにスープを注ぐという逆のスタイルで提供される。そして、このスープは海老の出汁をしっかりとったもので作られていてすごい濃厚。これだけでご飯も食べたい・・って思ってしまうくらいだ。

海老もきれいな細工がされているし、花びらのように見えるものは豆腐でできていて、ディテールまできっちり仕上げられている。

食べる時間は2時間なのだけど、これが作り上げられるまでにどれだけの下ごしらえとかの時間がかかったんだろうって思うと気が遠くなりそうだ。

BBQ(フォアグラ/紫蘇/チェリー)

暖かい料理ってだいたいは、料理から上にむかって湯気がわき上がってくるものだと思うけれど、この料理の場合、料理から下に向かって湯気というか煙が出てきているんだけど・・・となる料理。
料理としては甘辛い味付けのソースでからめたフォアグラのBBQとチェリーなど。小さいポーションの料理だけど濃いめの味付けで意外とがっつりくる感じ。器のおかしさに比べると極めてベーシックに美味しいという料理だった。

しかし、この料理はこれでおわりじゃないのです。

続いてれんげに紫色のぷるっとした球体がでてきたのだけど、これ赤ジソで風味つけた昆布茶で、これを食べて後味すっきりさせて完了。

表面はぷるぷるしているのだけど、中身は完全な液体で卵の黄身を食べるみたいな感じ。おもしろすぎる。

スパークリングトマト

ここでメインに行く前の口直し。皮をむかれたプチトマトと炭酸のドリンク。これを舌の上でトマトを噛んで、炭酸を通すことにより口内がリフレッシュされる。

さっき食べたフォアグラの脂や味がさっぱりなくなってリセットされるのだが、これが地味にすごい。いままでだと、経験的に伝えられてきたことが、科学的なアプローチで再現されているのだろうな。

ベガーズチキン(蓮/百合根など)

メインは切れ込みの入った黒いダチョウの卵みたいなのが出てきた・・・。

シェフの人がこの卵の解体方法について説明してくれるのだが、のこぎりを使って開いていくと、なかからキャベツに包まれた鶏肉のローストが出現した。しかも、この鶏肉には百合根や蓮の実なども詰められていてすごい味のバリエーションがあって楽しい。

これ作るのむちゃくちゃ大変そうだな・・と思うのだが、丁寧に作られた料理は絶品そのもの。なんだか、こういうのを食べちゃうと、これから料理に対する価値観変わるよなって思ってしまう。

黒たまごを解体
和牛ロール(キノコ/ライス/ジンジャー)

和牛ロールと野菜のソテー。今回のコースの中でもっともシンプルで普通のもの。こういう奇をてらわないものも抜群に美味しい。

そして、料理の締めでご飯をチョイスするあたりが自由なスタイルでいいなって思える料理。和牛の甘みが美味しかったなあ・・・。

12hours belated Breakfast/12時間遅れの朝食 

 

バーチャミューズリー

朝食といえば、ヨーグルトとグラノーラですよねってことで、バーチャミューズリーを分子料理からアプローチ。液体窒素!でヨーグルトをフローズンさせて、りんごとグラノーラを混ぜたもの。

いつもの料理がちょっと違って新しい発見の美味しさがあるっていうのが分子料理ならではっていうことを感じられる。

ブレッド&バター、目玉焼き、いちじく
目玉焼きにナイフをいれてみたけれど・・この感覚は本物みたい

そして、朝食の定番といえばとパンと目玉焼きということで、出てきたのはこちら。

でも、いつも見ているものとは違う・・。パンはパンじゃないし、バターはアイスで完全なデザート。そして極めつけは目玉焼き!ココナッツパンケーキの上にのっている黄身はマンゴーで出てきている。

黄身をナイフで切り込んでも目玉焼きのようにしか感じられないのだけど・・これが甘くて美味しいデザートなんだよね。。

アルギン酸ナトリウムを使って作られているのだろうけど、こういうどこにでもあるものを使って、どこにもないものを作り上げる力って本当に面白い。そして、いちじくはなにも手を入れていなくてシェフの人がいたずらっぽく「いちじくは・・いちじくですっ」といっていたのが楽しい。

Mignardises/ミニャルディーズ
トリュフ、もち、フルーツ&グミ

食事の最後を締めくくるミニャルディーズはトリュフ、もち、フルーツ&グミの三種類。

まずはトリュフ。これには弾けるキャンディが使われていて、食べあとの食感が面白い。

弾けるキャンディってジョエル・ロブションでも使われていた食材だけど、僕らには駄菓子として考えられているものが、こうして新しい手法で使われているのって面白いし、新しいものを取り入れる価値観っていいなって思う。

そして、もちなのだけど、これはアールグレイの風味が効いていて、トリュフの濃厚さをリセットしてくれるいいアクセント。つるっとした食感が気持ちいい。

ラストはフルーツ&グミで締めて、2時間の舞台のような食事が終了。圧倒的な美味しさと楽しさだった。

メニュー

いままで僕が分子料理に対してもっていたイメージって、既存のガストロノミーに対して科学的観点から作りだしていくものであるという印象をもっていたのだけど、実際に体験してみたあとでは違ったものとなった。

分子料理とは、既存のガストロノミーのベースが圧倒的に高い位置で存在していて、そこからさらに一歩上の段階にいくことに対して、科学的なアプローチだけじゃなくて、コミュニケーションや表現力といったインスタンスを解明して提供していく感じ。

なのでもう圧倒的されるわけです。そして、料理人の人がジョエル・ロブションで修行していたというのもすごく納得できるものだったし、日本語と英語を織り交ぜたコミュニケーションや圧倒的な感性と知性は、僕のもっている料理人に対する考え方が変わるくらい。きっと、こういう人たちがあたらしい料理の地平を切り開いていくんだろうなって思う。

タパス モラキュラーバー Tapas Molecular Bar
住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1 マンダリンオリエンタル東京38階

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